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クリニック開業に必要な資金はいくら?

この記事でわかること

  • 開業資金の目安(全体5,000万〜1億円)と、診療科別の相場
  • 見落としがちな運転資金と、診療報酬の入金ラグの考え方
  • 公庫・WAM・民間・リースをどう組み合わせるか
  • 金融機関が事業計画を評価する「事業性評価」の視点

 

クリニック開業に必要な資金はいくら?

ー診療科別の目安と、金融機関に評価される事業計画のつくり方

 

「開業したい。でも、いったいいくら必要なのか」

——多くの先生が、最初にここで立ち止まります。この記事では、開業資金の全体像と診療科別の目安、資金調達の方法に加えて、金融機関が事業計画の「どこ」を見ているのかまで、開業支援を専門とする税理士の視点で整理します。

 

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結論:目安は5,000万〜1億円(賃貸の場合)。

ただし本質は「総額」ではなく「返済しきれるか」

 

クリニックの開業資金は、一般的に5,000万円〜1億円程度が目安とされています(賃貸の場合)。ただしこれは診療科・立地・導入する医療機器の規模によって大きく変わります。

 

そして、開業を成功させるうえで本当に大切なのは、総額の大小ではありません。「開業後のキャッシュフロー(手元に残るお金)で、無理なく返済しきれる計画になっているか」です。金融機関が審査で見ているのも、まさにそこです。総額を抑えることばかりに気を取られると、かえって立ち上がり期の資金不足を招きます。

 

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開業資金の内訳:3つに分けて考える

 

開業資金は、大きく次の3つに分けると整理しやすくなります。

 

1. 物件・内装費

テナントか自院保有か、保証金、内装の坪単価などで変動します。医療は動線・レイアウトの要件が多く、一般の店舗より内装費が膨らみがちです。

 

2. 医療機器・什器費

診療科によって最も差が出る部分です。画像診断装置やCTを要する科目では、ここだけで数千万円規模になります。

 

3. 運転資金

開業直後の赤字期間を耐えるための資金です。ここが最も軽視されがちで、最も失敗につながります。 特に、保険診療の診療報酬は入金までに約2か月のタイムラグがあります。開業初月から患者が来ても、その診療報酬が現金化されるのは2か月後。この間の人件費・家賃・返済を賄う運転資金を厚めに確保しておくことが、開業後の安定を左右します。また、元金の返済開始の当初据置期間をどの程度の期間を見ておくか、というところもポイントです。立ち上がりの比較的早い在宅専門の場合には半年。その他の診療科目の場合は1年をおススメしています。

 

このほか、専門家費用(一般的には税理士さんやコンサルタントさんによる事業計画・収支計画で100万〜300万円程度、設計事務所など)、行政手続き費用、広告費、医師会入会金などがかかります。

 

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 診療科別の資金目安(あくまで相場)

 

診療科ごとの目安は、おおむね次のとおりです。いずれも立地・規模・機器のグレードで上下する相場であり、実際の計画では個別の見積もりが必要です。

 

| 診療科 | 開業資金の目安 |

|---|---|

| 一般内科 | 戸建て物件取得費で2,000万円程度〜/テナント6,000万〜8,000万円 |

| 心療内科・精神科 | 設備が少なく、全診療科の中でも比較的低コスト |

| 皮膚科(保険中心) | 2,000万〜6,000万円(美容皮膚科は1億円超のことも) |

| 眼科 | 高額な検査・画像機器が必要で高めになりやすい |

| 整形外科| 5,000万〜1億5,000万円(1億円前後が多い) |

| 歯科 | 3,000万〜1億前後 | チェアの台数によります。

 

初期投資が大きい科目ほど、その分だけ診療単価や患者数、診療報酬の規模も大きくなる傾向があります。重要なのは「投資額の大きさ」そのものではなく、その投資を回収できるだけの患者数・単価が、診療圏の中で現実的に見込めるかです。

 

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自己資金はどのくらい必要か

 

自己資金の目安は、総額のおおむね1〜2割とされることが多いです(たとえば保険中心の皮膚科で200万〜1,200万円程度)。3割あれば十分です。ただし、金融機関が見ているのは金額そのものよりも「計画的に積み立ててきた実績」です。毎月コツコツ貯めてきた通帳の履歴は、事業計画の実現可能性を裏づける材料になります。

開業を考えられるタイミングは子育てしている最中で、ここからお金がかかるよね、という時期にぶつかることが多くみられます。またすでに自宅も購入済みでローンの返済もあり大変な時期に重なりがち。お勤めの期間にどの程度ご準備いただいていたかは金融機関にとっても重要なファクターとなります。

 

なお、自己資金がごく少なくても公的融資で開業できるケースはありますが、金利や据置期間などの条件に影響することがあります。場合によってはコベナンツ(財務上の特別条項)をつけて定期的なモニタリングと満たさなかった場合の条件付与がありえますが、経営に影響を与えるほどのものではありません。とはいえ、融資手数料などという名目で費用を求められることは考えられます。

 

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 資金調達の方法

 

開業資金は、複数の調達先を検討するのが基本です。

 

民間金融機関(地方銀行・信用金庫)

金利や条件は公庫より個別性が高い一方、開業段階から関係を築いておくと、開業後の資金繰りや将来の医療法人化・承継の局面でも力になります。地域の金融機関との関係構築そのものが、経営の資産になります。

 

 日本政策金融公庫

政府系金融機関で、創業期の事業者に融資を実行しやすいのが特徴です。開業実績のない医師でも申請しやすく、低利・固定・長期で借りられます。融資限度額は設備資金7,200万円(うち運転資金4,800万円)、返済期間は設備資金で最長20年以内、運転資金で最長10年以内が原則で、据置期間(当初は利息のみの返済とする期間)を設けて立ち上がり期の負担を和らげられます。女性・35歳未満・55歳以上での開業には金利優遇があります。民間より審査に時間がかかる点は要注意です。

※制度内容は改定されることがあるため、申込前に最新の公式情報をご確認ください。

 

 独立行政法人 福祉医療機構(WAM)

医療・福祉施設に特化した公的融資機関で、長期・低利・固定の融資を提供しています。設備資金に向いており、公庫と併用が可能です(たとえば運転資金は公庫、設備資金はWAM、という使い分け)。建築する場合など比較的大きな案件の場合に検討します。

 

 

 医療信用(医師信用)・リース会社・補助金・自治体

医師会に加入される場合、医師会経由の融資制度として医療信用組合(医師信用組合)、医療機器のリース(初期投資を圧縮できるが総支払額は増えやすい)、自治体の補助金・助成金なども、条件が合えば有効な選択肢です。

 

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金融機関は事業計画の「どこ」を見るのか

 

多くの開業本や記事は「いくらかかるか」で終わりますが、実務で差がつくのはここからです。金融機関は、あなたの事業計画を事業性評価の視点で読みます。担保や保証ではなく、事業そのものの継続性・収益性を見るということです。

 

① 想定患者数は妥当か

最重要ポイントです。診療圏調査に基づく1日あたりの想定患者数が、地域の人口・競合・立地から見て現実的か。統計上、診療科目によりますが、内科の場合、開業初年度の診療所の1日あたり患者数は平均で約28人、健全な経営の一つの目安は1日約42人とされます。ここを楽観的に盛ると、計画全体の信頼性が一気に崩れます。

 

② 収益構造(粗利益率・人件費率)は健全か

売上は「患者数 × 診療単価 × 診療日数」で決まります。これに対し、人件費・地代家賃などの固定費がどの程度かかるのか。診療所は人件費率のコントロールが経営の生命線であり、そのバランスが計画に表れているかを見られます。

 

③ 返済原資と据置期間の設計は現実的か

前述の診療報酬の約2か月の入金ラグを織り込み、据置期間を使って立ち上がり期のキャッシュフローを支える設計になっているか。「利益が出る計画」だけでなく「現金が回る計画」であることが問われます。

 

④ 自己資金の積立実績と、医師としての勤務経験(実現性)

これらは、計画が「絵に描いた餅」でないことを裏づける材料になります。

 

なお、2026年5月に施行された「事業性融資推進法」により、担保・保証に依存せず、事業の将来性そのものを評価して融資する流れが強まっています。だからこそ、数字で語れる事業計画の価値がこれまで以上に高まっています。

 

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よくある失敗

 

- 運転資金を軽視し、立ち上がり期に資金がショートする

- 医療機器を「念のため」フルスペックで揃え、初期投資が過大になる

- 楽観的な患者数で計画を作り、金融機関に見抜かれる

- 依頼した税理士が医療に不慣れで、事業計画書が金融機関に響かない

 

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税理士にできること

 

あさの会計では、開業を考え始めた段階から、次のようなかたちで伴走しています。

 

- 診療圏調査を踏まえた、現実的な事業計画・収支計画の策定

- 民間金融機関をベースに日本政策金融公庫・WAMの最適な組み合わせの設計と、融資折衝への同席

- 据置期間・資金繰り表の設計(開業初期のキャッシュフローを守る)

- freeeによる、開業初日からの数値の見える化

- 社会保険労務士・医療機器卸・医師会との連携

 

数字だけでなく、診療の現場が分かるチームであることを大切にしています。まずは、イメージが固まっていない段階からで構いません。

雑談からご一緒させてくださ

 

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 よくある質問(FAQ)

 

Q. 自己資金がほとんどなくても開業できますか?

公的融資を活用すれば可能なケースもありますが、金利や据置などの条件に影響することがあります。金額よりも「計画的に積み立ててきた実績」が評価されます。

 

Q. 公庫と民間銀行、どちらで借りるべきですか?

開業後の関係を見据えて、地域の金融機関をまずは推しています。条件によっては低利・長期の公庫を軸に、WAMや医療信用組合(医師信用組合)を検討します。

 

Q. 開業までどのくらいの期間がかかりますか?

物件や診療科によりますが、建築する場合は構想から2年。テナントの場合は半年から1年程度でしょうか。勤務先の退職できるタイミングにも関わってきます。

 

Q. 相談は開業のどのくらい前からできますか?

構想段階からで大丈夫です。むしろ、自己資金の積立や物件選定の前にご相談いただくほど、選択肢を広く持てます。

 

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 出典・参考

- 日本政策金融公庫「融資制度一覧(国民生活事業)」 https://www.jfc.go.jp/

- 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「ご融資の種類(診療所)」 https://www.wam.go.jp/

- 診療科別の開業資金の目安は各種公開情報(医療系開業支援メディア等)をもとにした相場観です。実際の金額・制度内容は変動するため、計画時点の最新情報および個別見積もりでご確認ください。